brand-new FACE.

松村茂信は捉えどころのない選手だった。
私は去年、松村が入学してすぐに、上級生部員から「1対1は松村が上手いっスよ」と聞いて以来、松村の才能に注目してきたつもりである。
しかし、怪我がちなこともあり、1年間かかっても “これ” というものは見出せなかった。
確かに上手い。体の使い方にもセンスを感じる。
だが、上手い、という点では、明大バスケ部の誰もが上手いし、松村と同等かそれ以上のレベルで身体感覚に優れた選手も居る。
185cmという、バスケ部では“やや大きい”身長も、痩身の体形のせいか、“平均的な体形”に見えた。
正直な話、「松村は埋もれていくのかな」とまで思ったこともあった。
しかし、昨日の日大戦で、松村は新たな一面を見せる。
本来のポジションではないC、PFとして起用された中で、自分より10cm近くも大きい相手のパワープレーにも怯まずにディフェンスしシュートを落とさせる、3人に囲まれた中でオフェンスリバウンドを奪う。そして、速攻には惜しみなく走る。
2Qに明治が日大に対してリードを拡げられた最大の功労者は松村だった。
「上手くはあるけど、ハートが足りない」。そう思っていた私の松村評を覆すには十分な働きであった。
テクニシャンが手にした “勇気”。それを手放さなければ、埋もれることなど。