飯沼洋一郎 〜 十歩先の自分を追いかけて


Photo @ 2008/12/07 Yoyogi National Gymnasium(2ndGym).
 
日常雑記から始めると、今は愛知の実家でこれからむかえる社会人生活に備えて、部屋の整理をし(東京生活での荷物が多すぎてまだちゃんと整理できてなかったりする)、通勤用のかばんを買い、ワイシャツを買い足し、資格の勉強に手をつけ、日経を購読し始め(会社に勧められた)、電卓を買った。桜も咲き始めた3月後半の暖かい陽気に気持ちもうららかになり、つい惰眠をむさぼってしまうけど、これからは毎朝早起きしなければなりません。4月からは明治大学でのバスケット部でのことをあらためて考える暇もなく過ぎ去っていくのではないか。そんな不安すらある今日このごろです。
 
とっても良い詩を、ふと思い出したので紹介します。谷川俊太郎の有名な詩です。
 
「成人の日に」

人間とは常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること もしそうなら
私たちはみな日々成人の日を生きている
完全な人間はどこにもいない
人間とは何かを知りつくしている者もいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
そしてみな答えているのだ
その問いに
毎日のささやかな行動で
 
人は人を傷つける 人は人を慰める
人は人を怖れ 人は人を求める
子供とおとなの区別がどこにあるのか
子供は生まれ出たそのときから小さなおとな
おとなは一生小さな子ども
 
どんな美しい記念の晴れ着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけではきみをおとなにはしてくれない
他人のうちに自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ
でき上がったどんな権威にもしばられず
流れ動く多数の意見にまどわされず
とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組み直しつくりかえる
それこそがおとなの始まり
永遠に終わらないおとなへの出発点
人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ

(『魂のいちばんおいしいところ 谷川俊太郎詩集』サンリオ)
 
 
タイトルは「成人の日」ですが、僕の気持ちはまさに今、成人をむかえたといえます。なぜなら、大学卒業で僕は入学する前と比べてずっと成長し、強くなったと思うからで、具体的に言えばバスケでは、高校時代からみれば体成長したし、少しは体力も上がった。なにより大きかったのは熱血といっても過言でない塚さんのアツいアツい指導だと思います。
「子どもと大人の区別」なんて実際にはない、と僕も思う。僕がスーツを着てネクタイを締めればそれだけで社会人に変身するということはないし、そんな格好だけのものよりは、バンクーバー五輪や世界大会で日本の全国民の期待を背負って演技をしたフィギュアスケート浅田真央のほうがよっぽど僕より立派な大人であると思うから。それが大学入学当初には理解できていなかった気がします。だけどこの4年間でそういうことも理解できるようになった。それは間違いなく明治大学バスケットボール部にいた経験(ほんとにいろいろなことを経験したが、ここには全部書けない)によるものであり、その結果、僕はバスケに対して深く考えることができたし(もちろん人生観においても)、誇りを持つことができました。チームに貢献できたかどうかはわからないし、練習などでチームに迷惑をかけた。そんなときにチームメイトは支えてくれた。とてもすばらしい経験をすることができました。この感謝の気持ちを恩返しすることは今となっては難しいかもしれません。だけども、明治大学バスケットボール部が僕に与えてくれたことを、これから先、後輩や、僕が関わっていく人たちに話をして伝えていくことができたら、少なくとも僕が明治にいたという証にはなるのかなと思います。
「人間は完璧ではないから、先生はそれを見せなければならない。」とある教員の方に言われたことがあります。僕は将来、そういう先生になりたいと思います。(教師になれるかどうかは分からないけど)明治のバスケ部で学んだことはかけがえのないもので、一生大切にしなければいけないし、だからこそ教員をやることがあればそれを伝えたい――それが僕に対して面とむかって叱ってくれた塚さんや浜西監督や種さんやバスケ部のみんなへの感謝のかたちであり、恩返しになる――と思います。
塚さんに怒られたことだって、誇りです。塚さんの指導を受けたくても受けることができない人達もいっぱいいることを考えたら……。あんまりみんなの前で意見を言わなかった僕ですが(得意ではないので)この場を借りて、感謝を述べたいと思います。
4年間ありがとうございました。そして、これからはOBとしてよろしくお願いします。
 
P.S. 種さんには、試合の中できっと、僕のプレイをカメラのファインダーで覗き込みながら「もっとこうすればいいのに」と、何回も歯痒い思いをさせたことと思います。歴代の明治バスケ部の名センター達をみてきた種さんにとって、僕はだいぶ甘ちゃんでした。それでも理論に裏打ちされた的確なアドバイスや時には自分の体までつかって指導してくれて、とても助かりました。ありがとうございました。
 

Photo @ 2009/09/19 Daito Bunka University Higashi-Matsuyama Campus.